坂内のラーメンと聞いて何を思い浮かべるでしょう。独特のちぢれを持つ熟成多加水麺、そしてトロッとした食感がたまらない焼豚……。
この2つを想像した人が多いはず。でも坂内のラーメンに欠かせないもう一つの要素があります。そう、スープです。ここでは坂内の「スープ」の匠にそのこだわりをうかがいます。
直営営業チーム部長、上り濵龍次は、坂内のあらゆる店舗で腕を磨いたスープの匠。彼は坂内のラーメンのスープについてこのように話します。「坂内のスープは麺や、焼豚の土台になる部分。派手ではないですがとても大切。だからこそ手が抜けませんね」。そう、坂内のスープは特徴ある麺と、焼豚を支える大事な存在なのです。
しかも、坂内は全国各地に店舗を有します。それゆえどの店でも、同じ品質のスープを提供しなくてはなりません。この難題をクリアするために作られたのが、巨大な寸胴で炊かれる豚ガラスープと、坂内本店の味を再現するために作られた特製だれ。この2つのおかげで、坂内のラーメンを支える土台、美しいスープが完成するのです。
「スープは豚ガラオンリーです。これなら各店舗でも管理しやすいんですよ。最初にこの仕組みを考えた会長のスゴい発明ですね」と上り濵。しかし、スープは誰でも簡単に作れる代物ではないとも彼は語ります。「透明で雑味がないのが坂内のスープ。そのため、アクを丁寧に取り続けなくてはなりません」。スープ自体は2時間程度で炊き上がりますが、寸胴の火が落ちることはありません。アクを取る、火加減を見るという作業が閉店まで続き、スープのおいしさと、あの透明なスープの色とすっきりとした味わいが維持されているのです。
オープン前と夕方、日に2回のスープチェックは、店の味を守る大事な儀式。ほかにもマニュアル通りの作業が行われているかをチェックするなど、細かなルールがたくさんあります。これにより長時間営業でもおいしいスープを安定供給できるというわけ。それでもマニュアルでは表せない部分もたくさんあると上り濵は話します。「ガラの種類や大きさでアクの出方は変わるし、マニュアル通りにいかない部分もあります。やはり、おいしいスープを作るという気持ちが大事になってくる。坂内を愛している人にスープの仕込みをやってほしいとおもっていますね」。雑味のない透明なスープを作る作業は、ただのマニュアル作業ではないのです。
スープで大切なのは味だけではありません。「温度、これこそ一番大切です」と上り濵。坂内ではスープ提供時の最低基準温度を80℃に設定しています。これでも十分熱いですが、上り濵は85℃を目指すとラーメンそのものがさらにランクアップすると話します。「熱々のスープだと麺がふっくらするんです。せっかくおいしい麺と焼豚があるんだから、最高の状態で提供したいですね」。熱々のラーメンを出すために器をスープで温めるなど、各店で細やかな工夫が行われています。これがお客様に満足していただける一杯につながるのです。
上り濵は坂内のスープの今後について、このように話してくれました。「実は潮来店のスープがおいしいという声があり、調べてみたら水の成分が違っていることがわかりました。今後は水も追求していきたいですね」。これまでのスープの味を守りつつ、さらなる高みを目指す旅は続いていきます。「そしてやはり、坂内のスープを愛し、ラーメンを愛す人を作っていかなければなりません」と上り濵。坂内各店のスタッフがスープの匠を目指し、これからも透明に澄んだ美しいスープを作っていきます。